大判例

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長野家庭裁判所飯田支部 昭和46年(家)910号・昭46年(家)911号 審判

〔主文〕事件本人を限定治産者(準禁治産者)とする。

事件本人の後見人に申立人を選任する。

〔理由〕一 申立人は、事件本人に対して禁治産の宣告をなし、申立人を事件本人の後見人に選任するとの審判を求めた。

二 そこで審按するに、<証拠略>を総合すると、申立人と事件本人は親子の間柄にあつてともに大韓民国の国籍を有し、肩書住所に居住して同居しているものであつて、申立人は事件本人の長男であること、事件本人は昭和四六年三月二一日飯田市○○○二丁目と同三丁目の交差点において歩行中、○○○運転の乗用自動車にはねられ、頭蓋骨骨折、骨盤骨折の傷害を受け、意識不明となり、同日○○○郡○○町所在の○○赤十字病院に入院し、同年六月二三日同病院を退院し、退院後は同病院のほか飯田市○○町所在の○○外科病院および○○市○○所在の○○○病院へ通院加療したが、昭和四六年一〇月二六日現在において頭部頸部外傷後遺症と腰部外傷後遺症があつて、精神障害著明のため常に介助を必要とするとの診断を受けているもので、事件本人の精神状態は右外傷後痴ほの状態となり、事物の理非善悪の弁識能力が著しく低下し、その弁識に従つて行動する能力に乏しい状態にあることが認められる。

以上認定した事実によると、事件本人の心神の状態は心神喪失の常況にあるとはいえないから禁治産者とみることはできないが、心神耗弱の状態にあるとみるのを相当とするので、心神耗弱者として民法第一一条の準禁治産者に該るものということができる。

そして前記のように申立人、事件本人はともに日本に住所を有するもので肩書住所に居住しているものであるから、その住所地たる当裁判所に裁判権および管轄権の存することが明らかである。

三 つぎに本件の準拠法について考えるに、前記のように申立人、事件本人はいずれも大韓民国に国籍を有するものであるところ、法例第五条によつて準用される法例第四条によると、準禁治産の原因はその準禁治産者の本国法によるべく、本件においては事件本人の本国法である大韓民国民法によるべきことになる。ところで大韓民国民法第九条によると、「心神の薄弱……により家族の生活を窮迫におとしいれる虞れある者に対して法院は本人、配偶者、四寸(親等)以内の親族、戸主、後見人又は検事の請求に依り限定治産の宣告をしなければならない」としており、右法条にいう心神の薄弱とは心神耗弱を、限定治産とは準禁治産を意味するものと解されるが、事件本人は前記認定のように準禁治産の原因があることが明らかであるから、法例第五条、第四条により右大韓民国民法第九条に基き事件本人に対して限定治産(準禁治産)の宣告をなすこととする。

しかるところ、大韓民国民法第九二九条によると、「禁治産又は限定治産の宣告があつたときは、その宣告を受けた者の後見人をおかなければならない」とし、日本民法にいう準禁治者にも後見人を付する旨規定しているから、限定治産者についても後見人を付する必要があるものというべきである。そして法例第二三条によると後見人は被後見人の本国法によるものとされているので、日本に在住する外国人である事件本人の後見についてもその本国法である大韓民国民法によるべきで本件後見人の選任は同法を適用すべきであると解されるところ、大韓民国民法第九三三条によると、後見人の順位は配偶者、直系血族、三親等内の傍系血族、戸主となつており、本件記録および申立人の陳述によると、事件本人の配偶者張元学(申立人の父)は昭和三五年四月二三日に死亡していることが認められ、しかも配偶者の次順位である事件本人の直系血族(子)である申立人が自ら事件本人の後見人として申立人を選任されたい旨希望しているので、申立人のこの点についての申立は相当と認めて申立人を事件本人の後見人に選任することとする。

よつて主文のとおり審判する。

(柳原嘉藤)

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